貴方の見ているドメインは
このページについて
「すまんでしたな、長話をして」
「あゝ、よからう。大賛成ですよ」
「どうも、やつぱりねえ。調子が悪い」
だが、急に機嫌をとり直した。そして、徳次が彼の口から聞くことでどんな表情になるかを期待しながら、ゆつくり相手の顔を見て云つた。
だが、変化は盛子にだけあるのではなかつた。房一も、捉みどころのないやうに思はれる一年あまりにもかゝはらず、あの計画だの野心だの猪突ちよとつだのいふものの他に、何か一つの自然さが、生活のつくり上げる自然な段取りといふやうなものがいつの間にか身体にくつついて来たやうであつた。
その粗暴な外見とは反対に、徳次はさういふ血生臭ちなまぐさいことが嫌ひだつた。そして、人並外れた敏感さを示すのであつた。今もそれで、彼はいかにも心外げな様子を、その無意識な仕草の中に現していた。
「おう、これか」
「いつこちらへお帰りでしたか」
「やつぱり徳さんが多いね」
「まさか!」
読経どきやうはまだ始まらなかつた。
「いや、そんなこたあ、――そんなこたあしませんよ」